(1)実践記録の特徴
前半は、文化祭での「アジアン風お菓子屋さん」の取り組みを通してのHR集団づくりの指導。 2人のリーダー理沙と友那の活動を軸に、彼女らを取り巻く活動的な優香、美優、ドアンらが絡む(問題の種も蒔かれる)。販売活動の中心だった友那の文化祭2日目は「開店しない」という決定をめぐって、再討議が行われる。
後半は、文化祭の取り組みと修学旅行の部屋割りをめぐる優香と理沙、沙紀、夏美のトラブルを解きほぐし、一定の和解に至るまでの親密グループの指導。優香は、自分が考えた装飾のアイデアを理沙に横取りされたと感じ、また彼女を裏で攻撃したことをクラスに知られたと思い、学校に来れなくなる。また修学旅行の部屋割りで、人間関係の好き嫌いを不用意に出してしまったことから孤立する。
(2)分析のねらい
文化祭指導に頭を悩ませる担任は少なくない。そもそも、文化祭を通じて何を指導するのか、何を持って「文化祭の成功」とするのか、その観点が曖昧なことも多い。そこで高生研らしく議論を進めるために、文化祭を通じて、石田実践記録の中から「リーダー」「活動グループ」「話しあい」をどう指導したかに着目したい。…中略…
後半、石田さんは、4人の女生徒のトラブルを丹念に解きほぐし、一定の和解と謝罪にまで至っている。「いつも大切に思っていたことは、生徒に寄り添いながら生徒のホンネを引き出そうとすること。該当生徒との対話や話しあいを行う中で解決策を見いだしていくことであった。このやり方であると、苦にならず逆に楽しみながら対応できた」という。その柔軟さ、生徒とともに困難をも楽しんでしまう姿勢は、生活指導教師の面目躍如である。
だが、なぜ、4人の亀裂をここまで修復できたのだろうか。石田さんのねばり強い指導はもちろんだが、文化祭を通じての4人それぞれの成長が、修復に踏み出す勇気や見通しを獲得させたのではないだろうか。4人それぞれの側からこの修復の持つ意味を考えてみたい。
(3)分析の柱
A.議論前半
①理沙と友那がリーダーに成長していく場面をさがしてみる。2人のリーダー性にはどんな違いがあるか、分析してみる。
②優香、美優、ドアンが頑張っている場面をさがしてみる。それらを通じて、どのような関係が生まれたかを想像してみる。
③友那の「明日はやらない」を受けた翌朝の「話しあい」のよい点と問題点を明らかにしてみる。
B.議論後半
①優香と理沙は、修復を通じて、それぞれどのように成長したのか(しなかったのか)
②優香と沙紀は、修復を通じて、それぞれどのように成長したのか(しなかったのか)
③ ①と②の修復に関わって、あなたが担任ならどんな指導言を考えるだろうか。
多くの方の参加をお待ちしています。 (大阪 井沼淳一郎)
カテゴリー: 一般分科会PR
一般分科会2 HR「ある学級における、学級づくりのあゆみ」
重い障害を持ったS君のいるクラス。他にも数人発達障害を持った生徒がいる。
山本先生は生徒たちをつなごうと、楽しくみんなが参加できるHRづくりを行う。
と同時に生徒の不満や声を丁寧に聞き取りつなげようとする。
しかしS君の世話をしていたH君がS君へ暴力事件を起こす。
山本先生は学年団の支援を元にH君の不満を聞き取り、S君への対応に当たる。
一方文化祭は企画案を丁寧に議論し、クラスとしても楽しめる企画と
なった。S君はごみ捨てでクラスに貢献できたと喜んでいた。
発達障害の生徒へのケアと成長をHR集団の成長とつなげ、
どうように指導していくか、醍醐味のある報告です。
是非ご参加下さい。
運営委員 森 俊二
一般分科会6 生徒会「スノーフェス~新設”冬の遠足”の取り組み~」
「昼間の定時制にいます」と自己紹介すると、大概怪訝な顔をされます。 「定時制?昼間?どっち?」という質問に「定時というのは決まった時間内に必修授業が組まれる形態のことで、就学時間は関係ない」と説明するのですが、一般に定時制は夜間にやっている、というイメージが強く、私や、報告者の長谷川さんの勤務する昼間定時制の意義や役割はあまり理解されていないように感じます。 単位制で自分のペースで学習ができ、全日制のような厳しい校則がなく、教室にいる人数も少なく、多くの高校生が通う昼間の時間帯に通える「昼間定時制」。集まってくるのは、中学まで不登校気味で学校での経験が薄い子や、発達に問題を抱えていたり、知的に遅れがあったりする学習に困難を伴う子、家庭環境に不安を抱える子など、なにかしら心に影を落としている生徒たちががほとんどです。そんな彼らだからこそ、高校という場でしか得られない学びを存分に身に着け、たくましく社会を生き抜くよすがにして欲しいと、教師は強く思っているのですが、実際には「学ぶからだ」ができていなくて、なかなか染み込んでくれない、というのが現状です。生活に不安があったり、人間関係に疲れていたり、使われていることばの意味さえわからなかったりすると、高校の学習どころではないのも仕方がないという気にもなります。学びの前に立ちはだかる、一般的には見えにくいさまざまな障害。それを超える「からだ」を作るために、長谷川さんが取り組んだのは、生徒の思いから始まる行事づくりでした。 「行事を通して生徒は成長する」という実感が、生活指導教師にはあります。しかし、「行事精選、学習時間確保」を謳う多くの同僚に、その感覚をどう伝えれば理解されるのか。「行事」の何が「生徒の成長」につながるのか。感覚だけではなく、ロジックとして提言できれば、もしかしたら、9月からの学校が少し変わるかもしれない。(個人的な思いですが)そんなロジカルな「行事論」「生徒会論」に迫る実践分析を目指したいと思っています。
一般分科会6 運営担当 伊藤香織
一般分科会3 「したがわせる教育から自他の声に耳をかたむける教育へ」
「去年のクラスは割とうまくいったのに、今年はなかなか・・・」
「的確な指導(指示?)のできる先生を生徒は求めているのでは?」
「私は、生徒になめられているような気がする」
「学校の管理的な雰囲気に飲み込まれそう」
「生徒との距離が取りづらい」
そんなことを1つでも考えたことのある方は、ぜひこの分科会へ。
報告者の東山さんは、転勤後すぐに1年生を担任します。そのクラスは、東山さんの指導方針をおおむね受け入れ、東山さん自身もなかなかいいクラスになったかなと思っていました。
そして2年目、誰も引き受けたがらないある生徒をクラスに迎え、なかなか彼女との関係が取れません。また、1年生の時に「強い指導」「引っ張てくれる担任」を経験した生徒たちが、東山さんを「なめている」様子。学校は、管理主義的雰囲気が強く、生徒たちも表面法はおとなしくしたがっているように見えます。でも、そんな雰囲気になじめない生徒も出てきます。
東山さんもいろいろ悩み、考え、生徒への接し方を工夫します。そして、生徒たちは・・・。
管理主義的な雰囲気の強い学校で、どうすれば「アメとムチ」ではない指導が生徒に届くのか、参加者で考えます。で、報告者・参加者とともに打開の方向を探りましょう。
「トラブルメーカーY子に担任の私が伴走して」(一般分科会HR)
運営担当 池上 聡一(鳥取高生研)
「『安心して言いたいことが言えるクラスにしよう』と伝えた学級開き。そこで出会った嘘つきで攻撃的なY子。関わりの中で父親に自尊心を傷つけられている背景を知る。嘘つきは傷つきの裏返しだという発見、何もできない私への焦りを経て、何もしないが伴走することで見えてきたこと。」
これは、大会リーフレットに掲載された、浦和さん自身の文章(実践紹介)ですが、報告の中に、「顔はにっこりしていたと思うと、般若のような顔つきになる。とにかく(Y子は)顔がコロコロと変わる、」といった記述も見られます。
「父親に自尊心を傷つけられている」Y子の現実が、嘘や攻撃性という形の自己表現につながっているのではないか、というのが浦和さんの直感です。そして現実に、クラスメートへのいびつな自己表現、いびつな関わりは、さまざまな問題を引き起こすのですが、この事例・実践は、参加者にも様々な問題を突き付けてきそうです。例えば・・・
①Y子との関係の中で「傷つけられた」と訴える個人を守り、安心していられる居場所をつくる(安心して居られる関係性ができるよう励ます)にはどのように実践していくべきか。
②Y子が直面していると考えられる現実(虐待され自尊心を傷つけられている現実)を踏まえて、「いびつな関係づくり」を乗り越えていけるよう励ますにはどうすればいいか。
③このような虐待を疑われる事例において、保護者をどのように把握・理解し、どのように関わっていくべきか。
④学級の公的な活動の場で問題があふれ出した時、どのように対処していくべきか。傷つけられた子どもにとって学校は解放と癒しの場になりうるが、生徒同士が対等平等の関係を築いていくために何ができるか、等々。
報告を一緒に分析・検討することで、生徒の様々な現実だけでなく、実践の道筋・ヒントが必ず見出せると思います。ぜひ、ご参加ください。
8月6日(日)一般分科会(午後)の部
七月になり、北国も真夏の天気です。昨日は、北海道が35度を超えました。
青森も30度近くになり、熱中症が心配です。
札幌大会も暑かったですね。今年の静岡はどうでしょうか?
さて、一般分科会の午後の部です。今年は午前、午後通しの分科会はないようですね。
5つの分科会は以下のとおりです。
・生徒会「スノーフェス~新設”冬の遠足”の取り組み~」
・HR「クラスは小さな社会である」
・HR「文化祭づくりの中で起きた女子どううしのトラブル」
・HR「トラブルメーカーY子にHR担任の私が伴走して」
・授業「豊太郎って誰?!~「舞姫」から学んだこと~」
青森では次の土日に文化祭が行われる高校が多いです。
本日、お休みの土曜日ですが、すでに部活動引退した3年生の生徒たちは出校して、クラスビデオづくりや模擬店の準備をしています。
明日から、授業を短縮して準備期間に入ります。
担任や文化部の先生は勤務時間の16時40分をこえ、午後7時半まで生徒たちと一緒に活動。
でも、いつもと違うのは、残業した時間分を夏休み期間に振り替えることができるようになりました。
さあ、皆さん、静岡でともに学び会いましょう。
ブログ担当
青森 吉田
学校に居場所がないと訴える生徒たちにどのように向き合い、実践を紡いでいくか 一般分科会7HRに「居場所がない生徒たちにどうかかわるか」PR
新任の太田さんが初めて担任となった2年A組。
1年生の時には「厳しくしつけてきた」ため「お利口」な学年だと自信をもっている持ち上がりの同僚教員。けれども実際は……
「学校へ行きたくない」、「学校をやめたい」、と訴える生徒たち。
そんな生徒たちとの出会い、対話を通じて太田さんは「学校に居場所がない……」という問題意識を持つようになり、本報告へと結びつきます。
居場所がないため退学を検討するそれぞれの生徒たちの生き方とどのように向き合い、実践を紡いでいくかを検討することは、まさに生活指導の探求と言えるでしょう。
(上森 さくら)
一般分科会6PR HR「1年生と目指した公的な空間のあるクラスづくり」
「民主的な人格を育てる」ことを教育目標とし、自治活動を育てている校風がある高校。クラス替えは三年間なく、担任だけが毎年替わる高校の1年生担任のクラスづくり。体育祭、クラス合宿、文化祭などの行事を通して生徒の「個々の力量」を基礎としない「集団づくり(生徒の自治活動)に関わる実践。私たち大人でも組織論や役割・立場論の前に、「人の力量」にゆだねる自治論が根強い中で、そうではなく、集団的な動きになるための、視点(日程や決め方、新しい組織的な動き方)を積極的に提案している。必ず双方的な視点で、誰が悪い・出来ていないという総括にはさせず、どちらにも必ずや引き取るべき総括があるという様なことばを、先生の問いかけの中で、気付かせ・自覚化させる。そういう総括が、クラスのものになることに努力されている。公的な空間を作るための担任の関わりについて、深く学び合いたいものです。
青森高生研
一般分科会2PR「生徒会『2/3の生徒会』」で、生徒会自治づくりを学ぼう!
絹村俊明
分科会タイトルを見て、「2/3」って何だろうと思う方もいらっしゃるかもしれません。その意味は分科会に参加していただければわかるとして、この分科会は、現在、生徒会顧問をやっていたり、これからやる予定である方々はもとより、生徒会指導に少しでも興味がある方にとって、生徒会自治活動づくりについて基本的なことから学べる場になると思います。
実践者である安藤さんの学校は、生徒会規約に生徒総会が位置づいていない、生徒総会という言葉が文面としても載っていない、いわば「生徒総会のない学校」です。生徒総会がないということは、本来、直接民主制であるはずの生徒会に最高決議機関がない、ということですから、どんな生徒会自治なのか、学校・教職員と生徒の関係はどうなっているのか、は容易に想像がつきます。実は、生徒総会が規約にはあっても実質開催されていない学校も含めれば、こういう学校は全国的には少なくないのかもしれません。
安藤さんは、そういう学校の生徒会顧問となり、生徒会執行部に生徒会の活動が「見える」ようになるための実務を教え、体育祭や文化祭の改革を地道にすすめながら、ついに生徒総会開催に行き着きます。
「主権者教育」が叫ばれる昨今、生徒会の自治的活動も主権者を育む教育活動として意味づけなおされつつあります。政治教育としての生徒会指導の重要性は今後も注目されていくでしょう。
安藤さんが目指している「生徒による、生徒自治、学校自治への政治的参加」はどのように実現できるのか、その可能性を実践分析の討論の中でいっしょに探り合おうではありませんか。多くの方々のご参加をお待ちしています。
おすすめ分科会PR一般分科会5「生徒会、県を動かし、水飲み場を増設!」
一般分科会7PR「HRに居場所がない生徒たちにどうかかわるか」
「クラッシュしても壊れない関係を読み解く、つくる、発展させる」
物語や文脈を持たずに生きているように見える現代人。しかし、そこには、読み解くべき物語や文脈があると考える。それは人間関係が衝突するときにこそ、鮮明に見えてくるものである。その現象は学校現場ではより凝縮されて見えてくるものかもしれない。映画「クラッシュ」をヒントに教師と生徒、生徒と生徒の衝突を書き綴った内容です。実践と呼べるような中核になるテーマや活動があるわけではありませんが、3人の生徒との衝突や関わりをもとに、どんな物語が浮かび上がるのか読み解いていきたいです。私自身、経験が浅く、生徒のどのような思いや願い、関係が埋まっていたのか読み解けていない部分があると思います。ぜひ、みなさんのご経験やお知恵をお借りし、分析していきたいと考えています。よろしくお願いします。
一般第4分科会PR「平和教育への意志を育てる歴史教育」
第4分科会の橋本実践の魅力は、羨ましいほど豊富な体験学習の数々です。
「戦争と史跡」という授業なのですが、おそらく学校設定科目なのでしょう。かなり自由、縛られていない、創意工夫が生きている。
メインはフィールドワーク実践です。弾薬庫跡、防空壕跡、東京大空襲・戦災資料センター、WAM(女たちの戦争と平和資料館)、陸軍登戸研究所平和資料館など、さまざまな場所に見学に出かけていきます。第5福竜丸の乗組員の方の話を聞く、という実践もある。
そして何といっても、この授業では、3泊4日の長崎研修旅行まで行っているところがすごい。選択授業で研修旅行ができるのですね。研修旅行では、原爆資料館や岡まさはる平和資料館、軍艦島、長崎歴史文化博物館を見学し、反核署名に取り組む現地の高校生たちと交流し、街頭インタビューなどの能動的な活動も行っている。一冊の本にまとめられるくらいの豊富さです。企画・準備も大変そうですが・・・。
レポートでは、紙面の制約上のためか、残念ながら、見学した日付と場所の羅列になってしまっているのですが、1つひとつの見学地とその体験がそれぞれ内容豊かなものだったことは想像できます。分科会では、もう少し聞きこんで、深めていきたいです。
実は、橋本実践で訪れた平和資料館や戦跡をネットで調べてみました。戦争・空襲に巻き込まれた庶民の視点から戦争に迫ろうとするもの、女性視点から従軍慰安婦問題を取り上げるもの、科学研究と戦争とのつながりを考えさせるもの、日本の加害責任を追及しようるするものなど、それぞれの切り口やアプローチがあり、大変興味深く面白い(intersting)ものでした。一年間を通した授業なので、複数の場所や人びとに会っていますし、つまり戦争や平和を複数の視点から考える機会になっているですね。
もし、この分科会に参加しようと決めているのでしたら、事前にネットで調べておくと面白いですよ。
分科会では、橋本さんのフィールドワーク実践の可能性を議論したいと思います。
あと、橋本実践を成り立たせている思想性、つまり「歴史教育と政治教育に通底するもの」として教師の立場性についても議論したいと思っています。
では、大会当日にお待ちしております。
運営担当 岡村昭弘
◇「進学校」の教育にもメスを入れないとこの国の未来は暗い~一般分科会1「教育相談 『相談室からみえること』」PR(運営担当の一人・西村)
高生研でも、その他の教育研究集会でも、「進学校」の教育実践のレポートをあまり見ません。しかし、近頃ますます高校現場は、「進路保障」=「出口」の指導を最重点にしているように思えます。「生徒のため」という印籠のもとに、どんどん引っ張っていくのは、どうなのでしょうか? 受験優先の教育は、本当に「生徒のため」なのでしょうか?
数年前、「受験プレッシャー」に耐えきれず、心身に変調を来し、休学を余儀なくされた生徒がいました。その生徒の両親は、そんなに「受験、受験」という人ではなかったようです。その学校は、0時間目から授業をし(1日7時間)、模擬試験の回数も多く、夏休みもお盆前後の1週間を除いて(希望制の)進学補習があり、1年生は夏休み最初に4泊5日の(全員参加の)合宿補習があるという、「受験体制」の学校です。
青年期という、人生で一番多感な時期に「受験一色」の高校生活を送らせて良いはずがないと思います。自分のこと、友人のこと、社会のこと、そしてもちろん政治のことも考える余裕を「進学校」の生徒にも持ってほしいと思っています。
ところが、生徒数が減少しているにもかかわらず、「進学体制」が弱まったという声を聞きません。強固に見える「進学体制」は、一人の教員の力では、どうしようもないように思えます。そんななかで、大木聡子さんのレポートは、「息苦しい進学体制」に風穴を開けるヒントを与えてくれます。保健室や相談室は、学校内で、生徒の本音が聞ける、生徒が弱音を吐ける、数少ない場所ではないでしょうか。報告の中には、発達障害をはじめ「生きづらさ」を抱えた生徒が進学体制の中でもがく現実、そして、そのような子どもたちの視点から、学校のあり方を少しずつ問い直し共有していく過程が描かれています。
「この学校だから当たり前?」「何か変だな」「どうしたら良いのだろう」と思っている人にとっては、大いに示唆に富む報告です。もちろん、「進学校」以外に勤務している人も大歓迎です。
一般分科会1は、1日(7時間)かけて大木さんのレポートを分析します。こんな研究会は他にはありません。これが、高生研の魅力だと思います。大木さんのレポートを分析しながら、参加者の悩みも出せるような、そんな分科会になればいいなと思っています。「進学校の当たり前」を突く、みなさんの意見をお待ちしています。
一般分科会3PR 「HR作りから政治教育を考えよう」(運営担当の一人・塚本)
今年の全国大会には、静岡高生研から2名のレポーターが登場します! 一人は一般分科会1の大木さん、もう一人が一般分科会3の中村さんです。
中村さんが静岡高生研の例会に来るようになったのは、まだ数年前のことです。大木さんのように、高生研に長く関わってきた方ではありません。産休・育休などを経て、子育てが落ち着いてから、改めて生活指導やHRづくりについて学びたいと例会に来てくれたのでした。今の勤務校でも図書課長と兼任で、自ら希望してHR担任をされています。
中村さんがレポートを書いて、例会で発表するようになったのは3年前くらいだと思います。参加者が鋭く突っ込んだり、聞き込んだりすると、「ああそうだったのか」と深くうなずく中村さんの姿をよく見ました。「この時生徒はなんて言っていましたか」という例会での質問に答えられない時などは、その後学校で生徒にその時のことを振り返って聞きただしていました。
また、年度途中からでも生徒にSHRの司会・連絡をさせるようになったり、班長によるドラフト制での班替えを実施したりします。こういった、どん欲な「学びたい」という姿勢に、私たちも学ばされます。
中村さんは静岡県中部で、平和運動をする市民団体の主要メンバーとしてここ10年活躍されてもいます。静かな方ですが、芯は熱い方です。
ぜひ、この分科会に来てください。一見ごく普通に見えるHR実践ですが、参加者が豊かに学び合えることは間違いありません。
一般分科会3 授業 「パートナーとの対等な関係を考える」 小柴架奈子 運営担当からの PR
(生徒A)「せんせ~っ、聞いて聞いて!文化祭でY(Aが気に入っている男子)と(一緒に)写真撮ったよ!せんせ~も5組行ってY見てみてね!とてもかっこいいから!」
(私)「あぁ、うん….取りあえず写真一緒に撮れて良かったね….」
(生徒B)「せんせ~っ、M(Bの彼氏)が全然メール返してくれないんだけど、なんで? 私はすぐに返信してるのに?」
(私:俺にそんな事言われても…Mに直接聞けば?と思いながらも)「ん~と、何でだろうね..?ひょっとしてたまたまタイミングが悪かったかもね…」
(生徒C)「せんせ~..俺、F(Cが好きな女子)の事とても気にいってたのに….俺より先にD(Fが好きなもう一人の男子)がFに告ってしまった….そして!今!二人付き合ってるんだって!どーして!?何でDみたいな奴と!?」(私:俺に何て言って欲しいんだ!?)「そっかぁ….」
休み時間等での生徒たちとの何気ない会話で、どう返事(対応?)したらいいか分からない
時がたまにある。勤務校が変わったとしても、似たようなシチュエーションを経験する。
生徒たちにとって、上のような話題で話をする(おしゃべりする?)事が出来るのは仲のいい
友達か、話を聞いてくれそうな教師だけだと思う。「好き嫌い関係・恋愛関係のプチ問題」は、
ほとんどの場合、近しい人に話を聞いてもらえるだけで解決すると思うが、もし授業という場でそれら「プチ問題」を共有し、意見を出し合って議論を重ねる事が出来れば、クラス全体として成長するし、DV問題をさらにすんなりと理解する手助けになると思う。
小柴さんは、過去に行った授業での反省も踏まえつつ、生徒同士が気持ちを言語化しやすい
(言葉&文字)雰囲気を創りだし、それらを全体で議論し合える場を提供する。様々な「ハラスメントに関する事」を、我々が教材としてどのように活用していけばいいのかという道筋を示してくれる実践分析になると望んでいる。(照屋 淳)
一般分科会8 地域と学校(有志による社会参加) 「生徒は地域と人間関係で育つ」 森田和行 PR
薬学部へ進学した後も、「科学の祭典」に参加して、アドバイスしてくれる卒業生。保育園の保護者会の会長になって、子どもたちに科学の楽しさを知ってもらいたいと相談しに来る卒業生。製薬会社で、小学生を招待するイベントを企画し、科学の実験を取り入れたいという卒業生。
森田実践では、薬業クラブと課題研究が有機的に組み合わされ、高校生が、小学校への出前実験や地域のくすり学習館でのイベント体験を通じて、科学の楽しさを知り、社会参加(地域参加)の意味を実感し、成長している。また、クラブを主体にした、全員参加ではない有志活動のスタイルも注目に値する。「杣(そま)川と親しむ会」に参加、山紫水明賞を受賞した弓道部の活動も興味深い。
分科会では、具体的な取り組みを聞き取りながら、社会参加(地域参加)と有志活動が、高校生にとって持っている現代的意味とそのような取り組みを可能として教師の指導について考えたい。
当日は、薬業クラブの会長と副会長であり、また弓道部の部員でもある現役の高校生2人にも参加してもらう予定です。(藤本幹人)
一般分科会7「定時制のHR担任・生徒会顧問としての3年間」細川千明さんPR
過去に、生徒会での映画づくり、遠足、Dという生徒との関わり、修学旅行の実践を大阪高生研で発表してきました。
今回の報告では、それらを数珠つなぎにして、怒涛のように過ぎていった3年間をじっくり見つめ直したいという思いでレポートを書き進めていきました。
「いいな」と感じたことを見切り発車にやってた実践です。計画性も、見立てもありません。
あったのは、「目の前の生徒たちにとってもきっといいものであるはず」という根拠のない確信だけです。それを踏みにじる修学旅行がラストにやってきます。
一緒に生徒会活動を通して汗を流した生徒たちが、誰一人と参加しなかった修学旅行。
それは一体なぜだったのでしょうか。
「書く」ことで初めて気づかされることの連続です。
正直、「こんなにもエネルギーがいるものか・・・」と何度か心が折れそうになりました。
ですが、5月に学習会で報告をし、自分の想像以上に学びを掘り起こしてくださった参加者の皆さんに、とても勇気づけられました。
全国大会では皆さんとの議論を通してさらに深め、一緒に実践を完成させてもらえたらと思います。
一般分科会5「特別支援学校での初担任実践〜A君と1組の指導」レポーター本人からのPR
伝えたいことを上手く伝えられないA君のもどかしさに気づいたのは、学級崩壊の寸前だった。若者ばかりの担任団は、なんとか危機を乗り越えた。1組は“仲の良いクラス”に生まれ変わった。
報告者は、特別支援学校での勤務も、担任をするのも初めてです。最初は一つ一つの問題行動に気を取られて、生徒の気持ちに気づくことができなかったのです。A君は教師や生徒に暴力をふるい、クラスの中で徐々に孤立していきました。周囲の生徒はA君の行動にいらだち、暴言を浴びせました。
私は戸惑いながらも先輩教員や子どもたちから学び、少しずつ彼らの気持ちを聞き取れるようになりました。3人の担任がぎこちないながらも連携して対応して、クラスの雰囲気は徐々に良くなっていきました。A君への指導の見直しは、A君をとりまく他の生徒への指導の見直しへとつながっていきました。初動の失敗、教員間の連携不足、特別支援教育の専門性不足等、課題の多い実践ではありますが、初担任の一年間の「学び」を皆さんと共に深く掘り下げていけるような分科会にしていきたいと思います。よろしくお願いします。
一般分科会(2)HR「スクールカースト」を乗り越えるHR指導 PR
HR作りを「集団力学」として捉え、担任としての関わり方を考える分科会。
しばし、HR作りに関わる実践報告は、様々な課題を抱えた生徒(やその生徒の周りで起こる生徒間のトラブルなど)を中心に描かれがちだが、一般分科会(2)HR「スクールカースト」を乗り越えるHR指導で佐藤育実(東京)が、一番参加者と共に考えたかった視点は「集団力学」。どんなHRにも散見しうる生徒同士の小グループ、と、それらの明らかなすみ分け。またその間には、担任からすると、明らかなカーストとも言える序列関係が存在し、そんな引力関係は、それぞれの小グループ内でも働いている(が、生徒の捉えは、担任と一緒な様で一緒でもない・・)。
教員1人が、動き奮闘した所で解決されうる課題ではでない・・
しかし、一向に、自分達のこととHR作りを引き受けようとしない生徒達・・
そんな集団、そして不当に働くそんな引力関係は、どうしたら個々に解放されうるのか?
教員はどう関わることが出来るのか?
佐藤さんの文化祭を通しての実践を手掛かりに、参加者の皆さんと知恵を絞りたい!です。
一般分科会4 今日もノー天気!生徒と私のHRづくり レポーター 北海道・佐藤理河さん
報告者の佐藤さんは、実践の中で怒ったり、笑ったり、泣いたりと忙しい。生 徒たちも同じだ。「今日もノー天気!」という題名の通り、佐藤ク ラスの生徒 たちには、まるで学校を「遊び場」にしているような痛快さがある。学校行事の ジョギングでは「お花摘み」をして叱られたり、授業が うるさくて困ると他の 教師たちから苦情を受ける。担任の佐藤さんにとってはきっと苦しいことのはず なのに、読んでいてなんとなく微笑ましくな るのは何故だろう。
生徒たちは「プロジェクト」を次々に立ち上げて、遠足で「カレーコンテス ト」をやったり、卒業生のために雪像をつくったり、教師に断りもな く教室中 をハロウィンの飾りつけでいっぱいにしたり、やりたい放題。また、教師の発言 に腹が立った生徒たちが授業をボイコットする事件もおき る。
そんな楽しそうな学校でも、よーく実践を読むと、学校自体は日本中のどこに でもあるような「息苦しい」学校とさして変わりはないように見え る。どうし て佐藤さんのクラスの生徒たちは、こうも「ノー天気」で学校生活を楽しめるの か。その秘密を分科会に参加した皆さんといっしょに探 りたい、それがこの分 科会の中心テーマ。
「息苦しい」学校をどうにかして変えたい、生徒と楽しい活動をつくりたい、 そうお考えの方々の参加をお待ちしています。(運営担当・絹村俊 明)
北海道は1学年1クラスの学校がけっこうあります。全校生徒120人の小さな学校は、「さぞかしほのぼのとしている学校だろうな」と思われるかもしれません。でも、本校も全国同様に授業時数確保がぜったいで、行事がけずられHRの時間が服装指導や学力テストになって、HRイベントなんてありえないかんじです。
こんな雰囲気の中で、HR行事を決行するのはけっこう勇気がいります。しかも、HRがうるさく、授業が崩壊しているときなどはとくに。きっと全国のみなさんも同じだと思います。「もしかして、私って浮いてる?」と感じることもあります。
でも、きっと、いや絶対に他の先生は私のことをうらやましいと思っているはずです。本当は「いいなぁ、うちのクラスでもやりたいんだけど、ちょっと面倒だし・・・」と思っているはずです。
だから、いろんな先生を巻き込んでノー天気になんでもやってしまおうという話しです。
「先生、しっかりして」、「わかった、俺たちがやるから、先生は何もしなくていいから」と何度生徒に言われたことでしょう。最初はバレーボールさえまともにできなかった生徒たちが、自分たちで考え企画して、「楽しいことやりたい!」と叫ぶ。
そんな生徒の成長する3年間をふりかえり、みなさんの議論の中から勇気をもらいたいと思います。
(さとう りか)