研修旅行の引率に行ってきました。私たちの旅行は、観光旅行ではなくて生徒一人一人が研究テーマを持ってするフィールドワークなのですが、その途上で生徒たちはいろんな人と出会い、新しい体験をします。わたしたち教員にとっても、生徒たちと同様に異文化的非日常との出会いがあります。今回は旅行三日目に訪れたマレーシアのある村での経験を紹介したいと思います。
マレーシアの主要な輸出品にパーム油が挙げられますが、私たちが訪れた村は、パーム油を採取するための椰子の木が整然と植わっている風景が延々と続く地域に位置していました。椰子の木には幾つもの種類があって、ココナツヤシなどそのまま食用にするものもあり、木の高さはまちまちです。油を取る椰子の木は、最盛期には10メートル以上の高さになります。椰子の木は幹の頭頂部に放射状に葉っぱがでていて、油を採る実は葉っぱの軸が出ているあたりにできます。その高いところにできている実を、先端にカマをつけた長い長い棒を使って収穫するのです。実は数百個が塊になっていて、ひとつの塊は20kgにもなり、それらの実を絞って油をとるのだそうです。村の人たちがその作業をするのかと思いましたが、そうではないそうです。マレーシアの人はそんな作業はしない、椰子の実を採ったり油を絞ったりする現業は外国からの出稼ぎ労働者がしているとのことでした。プランテーションの中に、出稼ぎ労働者用宿舎があるとのことでした。マレーシア人は椰子のプランテーションのデスクワークや輸送トラックの運転手などの仕事に就くそうです。
そのヤシ林地域の中のとある小さな集落が第三セクターのような形で地元旅行会社と協定してホームステイ受け入れ事業をしているのでした。生徒たちは昼前に村に到着して集会所で歓迎を受け、ヤシの実採取とゴム採取の実演を見た後で各家庭に迎え入れられて次の日の朝まで過ごします。昼に出される食事はマレーシアのお正月料理と決まっていて、床に広げた布の上に並べられた料理の周囲に座って、習慣通りに右手だけをつかって手で食べます。私たち引率教員も本部として設定された家で老夫婦から昼食を出していただきました。家の主人は食べずにお客に給仕をしたり、大皿から各自の皿に取り分けたりして、とても親切にすすめて下さり、最後はフィンガーボウルを持ってまわって右手の指をすすがせて下さいました。
生徒たちは午後いっぱいテラスでゲームをしたり、庭でバドミントンをしたり、散歩をしたり、家庭ごとに楽しんでいました。私たち教員もゆっくりお茶を飲み、こちらは片言のマレー語、あちらは片言の英語、あとは身ぶり手ぶりで説明を受けて、チョンカと呼ばれるゲームをして遊びました。熱帯ですがヤシ林や熱帯雨林に囲まれているので風が涼しくてエアコンもありません。どの家の庭にもマンごスティンやバナナ、ドリアン、ココナツヤシなどの食べられる果物の木がたくさん植えてあって―それらはほとんど山から来るサルに持っていかれるそうですが―開け放した家のテラスで、まったりとした午後をゲームをして過ごすという、とても贅沢な非日常経験をしました。