埼玉の内田理です。
大会の交流会を一つつくります。そのご案内です。
「魂の脱植民地化とは何か」(青灯社)という本をご存知でしょうか。この本の著者である深尾葉子さんをお呼びして、お話をいただき交流する会をつくります。「魂の脱植民地化とは何か」の中に、「魂に蓋をする」という言葉が出てきます。この言葉が意味することと、私たちが日々の仕事の中で出会う様々な困難とがつながっていると思われるので、この交流会をつくることにしました。
親との関係から困難を抱え込んでいる子ども、摂食障害や自傷行為などの病理的な状態にある子、イジメなどハラスメント的な関係など、これらは子どもたちがその生育過程で「魂に蓋を」させられてきた結果なのではないかと思われるのです。
それだけではなく、「ゼロトレランス」や体罰、計画遂行型成果主義など、教育現場に蔓延しはじめている病理的な状態も絡む可能性があり、また、学校教育が「魂に蓋をする」ことを強化しているのではないかとも思えるのです。
「魂に蓋」をしてしまった極端な例が、2008年6月に秋葉原で連続無差別殺傷事件を起こした加藤智大でしょう。母親から虐待とも思える極端なしつけをされ続け、魂に蓋をして母親の期待する子どもを演じて育っています。こういった極端な例だけではなく、親や学校から教え込まれた価値観により、魂に蓋をして、それに合わせた自分を演じるような生き方をしている人は多いのではないでしょうか。
先日行われた全国フォーラムの参加者の一人に「魂に蓋」の話をしていたら、その方は自身の経験から、進学校の生徒達は自分たちに期待される将来像の圧力が強いためか、本当に自分がやりたいことを容易には語らないといっていました。かなり対話を重ねて、はじめて聞き出せるというのです。今の学校がつくりだしている支配的な文脈が、「魂に蓋をする」ことを強固にしていると思われます。(京都大会全体会で発題される酒田基調は、その支配的文脈を相対化することを含んだ提起になります)
深尾さんは、安富歩さん(http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/interview/16.html)らとの共同研究から「魂の植民地化」「脱魂の植民地化」という概念を見いだしていますが、その中で生まれた「魂に蓋」という概念は、安冨歩さんが本條晴一郎さんと書かれた「ハラスメントは連鎖する~『しつけ』『教育』という呪縛~」(光文社新書)にある、魂-インターフェイス理論やコミュニケーション論と絡んでいます。
これらの著作を読み進むうちに、深尾さんや安冨さんがいわれていることが、私たち高生研が研究してきたことに直接絡むと感じ、京都に近い大阪に住んでおられる深尾さんに交流会をお願いしました。深尾さんは教育と全く異なる分野の研究者ですが、だからこそ、今までの高生研で話されてきたこととはまったく別の視点からお話をいただけるもとと期待しています。
多くの方がこの交流会に参加して下さるよう、ご案内いたします。
深尾葉子さんプロフィールhttp://www2.econ.osaka-u.ac.jp/~fukao/default.htm