新自由主義のもと、家庭での暴力による虐待や「教育虐待」ともいわれる過度な学歴主義、孤立的な子育て、そして押しつけ・干渉・支配などにより、今や子どもたちの3人に1人が愛着障害を抱えていると言われる。さらに、家族やパートナーに愛着不安を抱える人は2人に1人とも言われる。
不安定な愛着におかれた子どもは、養育者や教師の顔色を窺ったり、良い子を振舞ったり、攻撃的になったりする。摂食障害、リストカット、依存(ゲーム等)、クレプトマニア(窃盗)等もその現われとも言われる。また養育者の意思が優先するため、気分の揺れが激しくなったり、自分の感情がわからなくなったりする子どもも多くみられる。しかし、こうした子どもたちは、教師等信頼できる大人の呼びかけと共感的な応答によって、安心・安全基地を獲得し、その苦しみと困難が修復されていく例は少なくない。そして、愛着の修復は何歳からでも可能であるといわれる。愛着障害や不安定な愛着などの背景とともに、具体的な対応策も提起したい。
またLGBTという言葉が認知されてきたが、セクシュアルマイノリティであると自覚した子どもたちは「フツー」でありたいという呪縛にとらわれたり、自らの性自認や性的指向に苦しんだりして、私個人の問題だとして孤立している。そうした子どもたちの個々の苦悩に寄り添いながら、彼らと一緒に「フツー」という概念を問い直し、彼らを生きづらくさせている差別的な構造をなくし、誰もがありのままに受け入れられる社会づくりに努めたい。
ここでは、愛着とセクシュアリティについて、誰もが生きやすい社会と関係をつくる社会の問題、関係性の問題ととらえ、そうした実践事例として、児童養護施設に勤務する大友実践をもとに考えたい。当日は、児童養護施設職員大友明(仮名)さんが対面で参加し、新卒の新任職員としてRと関わった実践記録を報告する(大友さんは、森ゼミ(自主ゼミ)の運営メンバーであり、昨年9月ゼミの報告である)。児童養護施設の実践報告は、高生研では近年にはなく、その詳細な実情もわかり、報告は必見である。
自閉的傾向があり発達障害を抱える、高校1年のRは他の子どもへの性加害があったとして、養護施設のなかで他の子と遊ぶことを一切禁止されている半監禁状態にある。就寝前の30分間だけ個別時間が設けられている。その時間だけがRにとって安らげる時間である。あるとき、小学 2 年児が 39℃の熱を出して体調を崩した。新米職員の大友は、引き継ぎ事項が重なりRの個別時間がなくなってしまうと、Rは「俺の相手をしろ」と、怒りを爆発させる。大友は、Rへ手紙を書いたり、食事を大盛にしたり、声がけを欠かさないように寄り添いを続けた。徐々にRとの関係が良くなってきたとき、Rは学校に疲れ、「死にたい」と大友に語り、「自分はLGBTだと思う」と、カムアウトする。(この後の実践は、紙幅もあるため、当日の大会紀要を見られたい)
大友さんの現在の取り組みの報告も聞きながら、皆さんと共に考えたい。
<高生研会員通信No.189より>