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「授業のユニバーサルデザイン」

「授業のユニバーサルデザイン」という発想が私の職場に広がり始めたきっかけは、数年前の2年生教科担当者会議でした。その席上で、A先生がTくんのことを話題に出して「1組Aくんは授業での板書をまったく書写しない。ノートを取ることをしない。提出物も出さない。定期テストの点数も悪い。進級できないかも…」と言ったのです。確かにTくんはぎりぎりで1年生から進級してきた生徒でしたが、A先生の発言に対して若いB先生から「Tくん、絵はすごく上手ですよ。授業のことも耳からは入っているみたい。問いに対して答えることはしてくれるし。」というTくん像が語られました。
複数の教科担当者からTくんについての話題がひとしきりやりとりされた後に「Tくんは文字の認識に困難を抱える一種の学習障害かもしれない。」という理解が共有されていったのでした。この時の議論がきっかけで、「様々な学習上の困難を抱える生徒が潜在的にいる、ということを常に頭に置いて授業をデザインする必要がある」ということが教員間でじわじわと了解され始めました。
「もっとも困っている生徒に合わせる授業デザインが、ひいてはすべての生徒がさらに学びやすくなる授業である」という認識のもとに、いくつかの工夫がじわじわと広がってきました。たとえば……授業の最初に黒板の端にメニューを書いておく―これは落ち着きのない生徒たちが、授業の見通しを持つことができて有効です。英語の授業は英文をワークシート化しておく―書写に困難を抱えている生徒が難なく授業に入れます。プリント類の活字を11ポイント以上にし、行間を十分空ける―視覚からの認識に困難を抱える生徒の苦労を減らします。成績評価のために筆記テストだけでなく口頭試問や発表、作品制作など、多様な評価法を取り入れる―今年度はすべての教科でこのことを実践に取り入れていきたいと思っています。

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