『常陽リビング』2014年7月5日号より
障害者の社会参加を応援しようと、障害者の親や関係者が会社を立ち上げて1996年に開店したカフェ・ベルガ(つくば市竹園)では、2012年9月に茨城県指定障害者福祉サービス事業所として発達障害のある人の就労支援を開始。カフェで社会訓練をしたり、サポートオフィスでスキルトレーニングを行う一方、企業には発達障害への理解と雇用を働きかけるなど「特性を生かした就労ができるよう」奮闘している。
カフェ・ベルガを運営する有限会社友遊舎(吉田美恵代表)は、障害者の親たちによるつくば市福祉等連絡協議会の有志が設立し、つくばカピオの開館に合わせて隣にオープンした。
サポートオフィスでの取り組みは、平成24年度茨城県新しい公共支援事業「提案型モデル事業」の一環としてつくば発達障害就労支援協議会(ウニベルシタスつくば、NPO法人艫づな会、(株)Kaien、茨城県保健福祉部障害福祉課、つくば市保健福祉部障害福祉課)が実施主体となった「発達障害のある若年層への就労支援モデル事業」を引き継いだもの。
つくば市天久保に事務所を構え、おおむね20歳~35歳の発達障害者および発達障害の傾向がある人で障害福祉サービス受給者証を取得している人(ない人の相談可)を対象に、さまざまな訓練を行う。
主な内容は
▽ビジネススキル・トレーニング
(パソコンの基礎や電話応対などビジネスの基礎力を学ぶ)
▽ワークサンプル・トレーニング
(さまざまな職種の疑似体験)
▽就職セミナー
(就職活動プロセスの理解から履歴書の書き方まで)
▽キャリアカウンセリングなど。
訓練期間は最長2年間。
「その間に、一人でも多くの人を社会に送り出したい」と願う指導員たち。理解不足による企業側の壁もあるが「発達障害の能力の偏りを理解してもらい、得意なところを生かせる仕事はたくさんあると思います」と代表の吉田さん。
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発達障害者支援法が定める発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、その他これに類似する脳機能の障害。中にはそれらが重なり合うこともあって状態はさまざまだが、見た目は健常者と変わらないため理解されにくく、見過ごされてうつなどの精神障害や不登校、ひきこもりなどの二次障害を発症することもある。
現在、訓練中のAさん(31歳)は、大学に入学した18歳の時に発達障害という言葉に出合い、しばらく後に発達障害と診断された。自分も親も初めて知る結果だったが、自身の胸の内では長年の違和感に答えが見つかった気がした。
「例えば時間の管理が苦手で朝起きられないとか、学習意欲の減退、自分のことばかり話す、人が笑っている理由が分からないなどちょっとしたズレです」とAさん。
次第に授業についていけなくなり、卒業を目指すものの8年間通った末にやむなく退学。それでも中学時代から磨いてきたパソコンスキルは優れ、自分に合う仕事を見つけたいと訓練に励んでいる。
また、カフェ・ベルガの厨房で社会研修しているBさん(27)は以前、飲食店で働いていたが別の店に異動になって多忙を極め、プレッシャーから仕事を続けられなくなった。しばらく休んでいたものの働く意欲が湧き、カフェで実習を積みながら社会復帰を目指している。
Bさんには「自分から話しかけるのが苦手」という特性があり、スタッフから積極的に声掛けをするなど具体的に支援する。
そうした一人ひとりの特性と問題を見極め、能力を伸ばしていくために指導員(計10人)は毎月1回ケース会議を開いている。
仕事上の注意や言葉掛け、タイミング、褒め方、普段の観察など情報交換は細部にわたり、「ここでの目標は自己理解、自己変容、問題解決能力です。そのためにどのようにフィードバックするかにかかっている」と意思統一。
そんな地道な支援が実り、過日も地域のスーパーに一人就職。先輩に続こうと実習や体験を希望する訓練生が増えている。
「誰もが働きやすい職場や環境があれば彼らの能力が発揮されます。社会に貢献できる人材が活用されないのはもったいない。まずは見学や体験で彼らを受け入れてほしい」と吉田さん。