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楽しいからやっただけです

「すてきな合唱、すばらしかった!ほんとに、AくんIくんたちの力やわ~。」
「いや~、楽しかったしおもしろかったっす。楽しいからやっただけです。」
「仰げば尊し」を歌うのが慣例であった私たちの学校の卒業式に、交渉の末「前例としない」ことを条件に生徒が選んだ歌を歌わせる方針をとったのが私たちの一つ上の学年でした。私たちの学年はどうしましょう?と昨年度の11月に5人の担任で話し合った末、「生徒の希望を聞きましょう」ということになり、全生徒にアンケート実施。その結果「歌は自分たちで選びたい」との回答が三分の二を占めたため、有志生徒を募って卒業式プロジェクトチームを立ち上げました。その時出てきてくれたのがAくんやIくんたちでした。昼休みにお弁当持ちで集まって話すうちに、「オレらの卒業式は何かを二部合唱したい」ということになり、何度も生徒アンケートを重ねて曲を絞り込み、“いきものがかり”のYELLに決まりました。
練習時間がほとんどない条件の中で200人の卒業生の二部合唱ができるだろうか?…少し合唱を知っている私は疑いましたが、とりあえずAくんIくんFくんHくんYくんの有志5人と私とで男子パートの練習を始めました。5人とも熱心でしたが、大きく音をはずすことなく歌えるのはAくんだけで…。しかし毎日昼休みに一緒に歌うのがとても楽しいらしく、そのうちに仲間を連れてくるようになりました。同心円が次第に大きくなるように練習の有志参加者が増えていったのでした。(女子パートは楽譜を読める人を中心に自主練習が進んでいました。)しかし、なかなか男女で「ハモる」ところまではいきません。学年全員参加の練習を3学期に数回行ったのちに、吹奏楽部のBさんに指揮を頼み、2月29日の卒業式予行でいよいよ最後の練習となり…。
卒業証書授与の時には名簿順に前を向いて座っている生徒たちが、合唱の時だけ保護者席に向き直りながら男女別に並び直します。男子が前・女子が後ろと決められた指定の合唱体形への移動から歌までを練習しました。男声女声の掛け合いがうまくあわない、男声の音が外れる、女声が弱い、等々の問題点が浮かび上がりましたが、私は「仕方ない、妥協しよう。歌うだけで十分。」と考えて、あまり指摘しませんでした。ところがプロジェクトチームからもそれ以外の生徒たちからも、「バラバラで合唱になってません」「男女の立ち位置を逆にしたほうがいいと思います」「女声が弱いから聞こえなくて掛け合いがあいません」という、もっと良くしたいという意見が次々と出てきました。予行練習終了の時間が迫っていたのですが、私は「しゃべっていい?」とプロジェクトチームに許可を得てマイクを握り、「女子が前で男子が後ろに変更します。各クラスの音量が最も大きくなるだろうと思われるように工夫して並んでください。時間が迫っているから15秒でやって。」と言いました。どのクラスも10秒かからずに並び直していました。男女とも、声の大きい人たちを前方に集めていました。その後もう一回行った練習では見違えるように音量が増え、そのまま卒業式当日の合唱へとつながったのでした。
「田中先生が並び方を生徒に任せた時は『なんてことするんや!』と思いましたけど、うまいこといってびっくりしました。」と他の先生が言ってました。ホントに、うまくいってよかったです。
                        (京都:田中)

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