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バス事故に思う

 京都から名古屋に越してきて丸2年経ったが、今でも月2,3回、名古屋と京都を往
復する。その移動のほとんどは自分で運転する車によるもので、その際、高速道路をも
っぱら利用する。運転するたびに思うのは、「高速道路は怖い」ということである。特
に、一人で運転していて眠気に襲われるのが最も怖い。そのたびに、長距離トラック、
バスの運転手は大変だなあと思っていた。さらに、以前NHKスペシャルで高速バスの
問題を知って、「あのバスは、なんぼ安かろうと乗らんとこ」と思っていた。そんな矢
先、関越自動車道で大事故が起きた。運転手の居眠りが原因だが、その背景に、過当な
安売り競争があることは間違いないだろう。亡くなったりケガをされたりした乗客の皆
さんには申し訳ない言い方になるが、「安けりゃいい」という価値観からはもう卒業し
よう。スーパーの野菜や肉もそうだ。安くても何が入っているか分からん○○国産より
、少々高くても安全で運送によるCO2排出の少ない地元の農産物を買おう。
 私は生物を教えていたので、ついつい生物の進化の歴史となぞらえて考えてしまう。
確かに、生物は競争によって進化してきた。同様に、人間社会が競争によって進歩して
きた面があることは否定しない。しかし生物は競争だけで繁栄を勝ち取ってきたわけで
はない。むしろ現在繁栄している生物のほとんどは、共生に成功した生物だ。被子植物
がミツや果実を提供する代わりに、昆虫・鳥・ホニュウ類が受粉や種子散布を手助けし
ている関係を見れば明らかである。さらに、今世界中で最も繁栄している植物はブナ科
(シイやカシなど)とラン科であるが、かれらはいずれも菌類(キノコ)との共生に成
功した植物である。競争では限界があるのだ。共生することで安定するのだ。
 人間社会も、他者と如何に共存共生できるか、それが本当の意味での繁栄、安定につ
ながると思う。産業面でもそうだ、教育面でもそうだ。適度な競争と確かな共生、これ
が持続可能な社会の決め手になると思う。
 ところで、今私の一番の心配は、安売り航空券である。もし飛行機が事故を起こした
ら、バス事故の比ではない。安売り競争の果てに安全性が蔑ろにされていないことをた
だ願うばかりだ。
久田晴生

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