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ギャルズの仁義

 一昨年の文化祭での出来事。A高校の文化祭では、オープニングの際にクラスの代表者による出展のPRを行なっている。2~3人の生徒がステージに上がり「1年○組は中庭で縁日をやりますので、みなさん来てくださいッ!」というようなことを言って終わるクラスが多いのだが、最近ではダンスやパフォーマンスを披露するクラスも現われ始めている。
 1年生のあるクラスでは、元気のいいギャルズがPRでパラパラを踊りたいと練習を始めていた。ちょうど同じ頃、2年生のクラスを超えたギャルズ有志も、中庭ステージ(A高校では中庭に鉄パイプとコンパネでステージを組んでいる)で踊るためにパラパラの練習をしていた。そして、それが偶然にも“かぶって”しまったのである。間もなく2年生のギャルズから横槍が入った。「うちらの曲パクッてんじゃねぇよッ!」てなもんである。1年ギャルズは「2年の先輩が因縁をつけてきた」と学年室に駆け込んで来た。2年ギャルズの行為は、明らかに活動への不当な介入であるから「君たちはそれに屈する必要はない」と諭したが、そうは言ってもやはり2年ギャルズは怖い。その時、学年主任は「今後、2年生が同じような圧力をかけてきたら、すぐに先生に言いに来なさい。必ず俺たちは君らを守る!」と言い切った。彼女たちは、口々に「○○先生、カッコイイ!」「惚れる!」などと言いながら学年室を出て行った。その後、両学年の職員が目を配りながらお互いの練習は続き、いよいよ文化祭当日を迎えた。
 ところがいきなりアクシデントに見舞われた。いつも携帯にダウンロードした曲で練習していたのだが、その音源をステージ上で拾うことができないのである。元気よくステージに上がった1年ギャルズは、そこで立ち往生してしまった。仕方なく、次のクラスのPRを先に回したものの状況は変わらない。その時である。2年ギャルズ有志の一人がステージに近づき、自分たちの音源(CDかMD)を1年ギャルズに渡した。“敵に塩を送る”とは、まさにこのことである。何だかとても暖かい気持ちになるような出来事だった。
 さて2年生ギャルズ(その名も『小悪魔愚連隊』)のほうだが、中庭ステージで元気良く3ステージをこなした。残念なのは、その中の何人かが学校を去ってしまったこと。まあ、これが現実である。
片桐哲郎

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