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「エレルギー」のぶつかりあい

 私の勤務している夜間定時制では「温かみある定時制教育事業」の一環として、毎年、様々な分野の外部講師を招いてのイベントを行っています。 今年度は、私の前任校の同僚だった音楽教師のMさんを招いての「声楽コンサート」を行いました。Mさんは、毎年、「フィガロの結婚」などの本格的なオペラを上演する全国的にも珍しい高校合唱部の顧問で、自身も現役のアマチュアオペラ歌手として活躍している人です。
 当日のコンサートでは、Mさんの軽快なトークを交えての歌とピアノの弾き語りに生徒たちは引き込まれ、リクエストまでとびたし、おおいに盛り上がりました。終了後、職員室でMさんは興奮したようすでこう語ってくれました。「定時制の生徒の前で歌うのは始めてで不安もあったが、歌い始めてびっくりした。生徒たちの『生活のエネルギー』のようなものが自分のほうに向かって来て、それに応えるようにこちらも力が入ってしまった。こんな経験は久しぶりだ。おかげで普段のコンサートの何倍も疲れた。コンサートは歌い手が一方的に発信するものではなく、聞き手との関係でなりたつものだから、今日はほんとうに心から楽しく歌えた」
 かつて同僚であった頃、冗談を言い合い仲の良かったMさんでしたが、こんなにも熱く自分の音楽論を語るのを見たことがありませんでした。そういうMさんの姿を見せてくれるきっかけとなった生徒たちの「エネルギー」を、私は誇りに思うと同時に、Mさんの話を聞きながら、私たちの毎日の授業にも通じるものがあるかもしれない、とふと思いました。教師と生徒、生徒と生徒の「エネルギー」がぶつかり合い、共鳴し合う授業、きっとそれは心地よい疲れとともに、芸術に触れた時のようなある種の感動を伴うものではないか、と思ったのです。

静岡・絹村俊明

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