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熊本発<6月学習会報告・感想編>

問い、悩みながらの授業づくり(前編)http://tokyotaikai2012ouen.blog.fc2.com/blog-entry-116.html
分析会に参加しての感想
藤川 秀一(熊本工業高校定時制)
 このままでも十分凄い実践ですが、これからますます成長していく可能性を秘めた実践です。2学期にその後を、1月大会で一応の集大成を報告していただき、そして全国大会でもぜひ発表してもらいたいと参加者の皆さんの意見が一致しました。
 集中出来ない生徒が何人かいる数学の授業、私語をしだした生徒たちは初めの頃は注意したら止めていたが、だんだん激しくなり、さらに聞かずにぼーっとしたり寝ている者も出てきます。
 教科担任の深久先生は生徒たちに「授業中に授業と全く関係のない私的な話が、注意を受けても延々と続く状態を、あなたはどう感じますか、どう思いますか、どう考えますか」というアンケートを実施します。
 このアンケートに20名のクラスの生徒のうちのなんと10名が記名で回答しました。 また17名が「このままではいけない」と書き込みます。
 深久先生は、アンケートの前に、すべて打ち出したものを皆に返すとは言いましたが、話し合いをするとまでは言っていませんでした。深久先生自身もそこまでの展望は持っていませんでした。
 話し合いができるかもしれないと深久先生が決断させられたのは、あの名前出しOKの十名(特に冒頭の女子3名)によるところが大きかったそうです
 深久先生の気持ちに応えて2名の生徒が司会に立候補し、話し合いの結果「授業中の5つのルール」が決められ、「サポートティーチャー(小先生?)」を3名の生徒が引き受けます。
 私も20年くらい前、40人の中で20人くらいの生徒がしゃべる、「しゃべるな!」と怒るとそのまま寝る。「寝るな!」と怒ると起きてしゃべり出すというクラスにアンケートを取り、それを生徒たちに返して考えさせる取り組みをしたことがあります。しかし深久クラスのように生徒の司会で話し合いをやり、さらに「授業中の5つのルール」まで作り、生徒が「サポートティーチャー」に立候補するなんてところまでは行きませんでした。その意味でも深久実践には感嘆させられます。
 生徒のアンケートの文章で気になったのがO君の「昨年に比べたら全然ましになった方だと思うし、気にならない。あと、昨年のテストはこばかにしたテストって先生は言ったけど、2組の男子はそれでみんな助かったから、別に悔しいとか思っていません。自分は昨年のテストでよかったと思う。」という意見です。
 私が深久先生だったら「O君の意見は私(深久)に対するスルドイ指摘であり、とても大事な意見だ。」とベタ褒めし、さらに「昨年に比べたら全然ましになった」とO君から評価されたことは大変嬉しいと高く評価すると同時に、今の授業の状態が「気にならない」というのはなぜだろうとコメントするでしょう。
О君は「自分は昨年のテスト(学年末考査)でよかったと思う。」と書いていますが、これから二つの意味が読み取れます。ひとつは文字通り「よかった」という意味です。もうひとつは逆に昨年の学年末のテストは「俺を(О君を)小馬鹿にしている」と感じたという意味です。 だからこそО君はその事を言い当てた深久先生に対して「昨年のテストはこばかにしたテストって先生は言ったけど」(深久先生が「こばかに」というような言葉を不用意に使ったとは考えにくい。О君の中にはすでにその言葉が一定の位置を占めていたのではないでしょうか。)「自分は昨年のテストでよかったと思う」と激しく反発しているのではないでしょうか。
 また「昨年に比べたら全然ましになった」と昨年の授業者を厳しく批判しているのだと思います。しかしО君はその悔しさを一応脇に置いて「2組の男子はそれでみんな助かったから」と鋭く指摘しています。ここに彼の批判精神とリーダー性を読み取ることができます。彼がこれからサポートティーチャーに立候補した時、深久先生の授業は大きく深化するのではないでしょうか。
 レポート分析の中で、これからの課題として指摘されたのが、
①「授業中の5つのルール」の点検をどのようにするのか。
②サポートティーチャー(小先生)をこれからどのように育てていくのか。の2点でした。
 このうちの②については、週に一回くらい放課後サポートティーチャーに集まって貰い、お茶しながら「サポートティーチャーやって嬉しかったこと、うまくいかなかったこと、こうすればいいんじゃ」というようなことをおしゃべりし、さらに深久先生の授業に対する要求が出るようになったらと思います。
 これからの展開が楽しみです。乞うご期待。(ふじかわ しゅういち)
教科でも可能なシチズンシップ教育
福永 信幸(湧心館高校定時制)
 5月に数学の模擬授業を体験し、「分かる授業」に懸命に取り組んでおられる深久さんの姿勢に感銘を受けました。そして6月学習会で「実際の生徒・クラスの現状」(の一部)に触れ、「これは感銘を受けたでは済まないくらいの高度な実践」だということに気づきました。「担任でないクラスの教科担当者がここまで生徒に迫れるのか?、いや、授業がうまくいかないクラスなんてどこの学校にでもあり、ごまかしながら毎日を過ごしている私(たち?)が生徒に全く迫っていないのか?」。困惑と刺激の学習会でした。
 以下、深久実践で私が評価する3点について述べたいと思います。
 まず最初に、「授業全体の緻密な構成」です。決して高いとはいえない勤務校での数学への興味・関心に対して、「解けることは楽しいこと」に気づかせるような、考え抜いた授業の流れだと感じました。特に②の「生徒のペンは置かせる」指導が「書くことと聞くことは同時にできない」という言われてみれば当然のことですが(私は板書しながら自己満足的に説明しています)、生徒の理解を重要視することが徹底しています。そして⑥の「周りに聞いて教えてもらってよい」や⑦の「(問題が)できた人は教師が○をつけ平常点に入れる」など、生徒間のコミュニケーションや考査以外の評価ポイントの積み重ねもしっかり加味されています。
 第二に、深久さんの「役者ぶり」(もちろん良い意味で)です。アンケートを取る際に、最初に用紙を配らず、生徒の顔を見ながら趣旨を分かりやすく説明されています(私だったら最初から配ってしまいます)。リード文も良いと思います。具体的に生徒の名前を挙げつつ自分の失敗を謝罪し、「ちからを貸してくれる人」(サポートティチャー)が出てきて欲しいという展望にまで言及しています。そしてアンケート結果を発表する時はもちろん、「話し合い」の場でも2人の女子生徒に進行役を任せながら(ここが重要です。私だったら介入して「教師主導」になると思います)、「授業ルールを自分たちで決定」させているのです。
 最後に、「このクラスのすごさを発見した深久さんの見識」です。私語が多く授業がうまく進まないクラスは私なら職員室で「また○○たちが騒いで、注意してもきかんとですよ」と言い放ってオシマイでしょう。深久さんは「課題は多いが、このクラスは1年間過ごした軌跡が必ず成果となって出る。自分たちの意見をキチンと出せる」と確信を持って、記名アンケート→結果発表→話し合い→ルール作りという一連の流れをつくられたのしょう(ご本人は「それは買いかぶりです。話し合いから先は、生徒に助けられながらの実践です」とおっしゃっていますが、私は「無意識のうちに計算している」と見ました。仲間贔屓すぎるでしょうか?)。
 重箱の隅をつつくような疑問点(職員集団はどう反応しているか、生徒の家庭環境はどうかなど)はさておき、「教科でも可能なシチズンシップ教育」を熊本から証明した実践ではないかと思います。秋以降の再報告が本当に楽しみです。
                             (ふくなが のぶゆき)

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