とにかく「おもしろさ」が前面に出る実践です。たとえば、授業態度が悪い生徒に対して、理科教員は「授業の態度が悪いのだから、バスケットも勝てないんだ」と叱ります。(理科教師はバスケの顧問)これは、第三者から見ると「言いがかり」なので、生徒も怒って授業をボイコットします。佐藤さんは、この生徒に味方になって「大事件にしよう」とします。私は、結果としてうまくいっているけど「途中経過」がわからなかったので、以下のように「聞き込み」をしました。
私「大事件にしてうまくいく、という展望はあったのですか?」
佐藤「もちろん、うまくいく自信はありましたよ」
私「でも、一人の生徒が抗議したくらいで学校側が納得しないでしょう」
佐藤「いや、大丈夫だと思ってました」
私「生徒が<もういい、めんどくさい、謝ればいいんでしょう>とあきらめるかもしれないでしょう。」
佐藤「生徒はちゃんと主張できると思ってましたよ」
私「佐藤さんの<楽観>の根拠がみえないですね。ではお尋ねしますけど、佐藤さんは生徒に聞いてみたのですか? たとえば、こんな感じで。
あなた、ほんとうに怒っているのね?
管理職が出てきても、自分の意見は言えますか?
私(佐藤)がついていれば、相手は3人でも大丈夫ですか?
<そもそも、あなたの授業態度が悪いのよ>と言われても、<それとこれとは別です>と言い切れますか?とか話しましたか?」
佐藤「たしかに、生徒に聞きましたよ。」
私「その時の会話を再現してもらえませんか?」
佐藤「・・・・(長くなるので省略)」
私「生徒が強い意思をもつとしても、佐藤さん一人が抗議しても負けるかもしれないでしょう?
おまけに、不幸なことにこの時には、佐藤さんは学校の中では<弱い立場>だったでしょう」
佐藤「私は<学級崩壊>を止められない<甘い>教師だと思われていました。だから立場は弱かったです。なので、徐々に味方を増やしていきました。」
私「具体的には、だれを、どんな風にして、味方にとりこんでいったのですか?
佐藤「・・・・(省略)」
こんな風にして、佐藤さんの「自信の根拠」が次第にあきらかになっていくのです。「生徒を信じることが大事」「佐藤さんの共感力に学ぼう」というスローガン(概念)でまとめて終わりにするだけは、実践は広がりません。
実践記録には「書いていない」けれど佐藤さんは「きちんと実践している」、その貴重な場面を再現してもらうと実践が臨場感をもってきますし、追試できるようになります。
とくに「対話場面」がイメージできると、若い教師や学生も「こんな風に語ればいいんだ」と安心できます。
みなさん、どんどん「聞き込み」をして、「佐藤さん自身も知らない<佐藤さんのおもしろさ>」をみんなで発見してみませんか。
こんなドラマがいくらでも発掘できるので、実践検討会は盛り上がることは確実です。