みなさんは「市民」を育てていますか?
…いや、その前に、ご自身は「市民」してますか?
私の勤務する農業高校には「Learning by Doing」というデューイの言葉が掲げてあります。「為すことによって学ぶ」の字義通り、「市民する」こと抜きに市民としての学びは深まりません。
翻って、シティズンシップ教育や生徒によるルールメイキングが流行っていますが、よく見ると単なる投票促進や「どんな髪型なら許されるか」の線引きを考えさせる、という看板倒れの「市民教育」もあります。大人にしても「民主的な職場」とは到底言い難い学校で、「自分たちの学校のことを自分たちで決めるには?」という問いすら立てづらい日々です。
本実践では、報告者たちがひたすら市民としてDoingしています。さらに、この実践には、若手(超多忙&経験値は蓄積途上)、国語科(政治は門外漢)、政治的タブー(リスキーで触れたくない)、(最初は)思い入れも覚悟もなかった、職場の無関心…等々、普通だったらDoingに踏み出せない理由(言い訳の種)が満載です。
では、「自分たちのことを自分たちで決めたい」という当たり前で切実な願いを、報告者たちはどのように行動につなげていったのでしょうか。そして、全国高生研や大阪高生研がこれまでに培ってきた学びや活動(Learning by Doing)が、どう関わっているのでしょうか。
報告者の「市民」活動は数多ありますが、簡単にまとめるとこんな感じです。
〇「どど万(どどばん)」の立ち上げ
大阪府の「万博子ども招待事業」の発表をきっかけに、若手教員たちが行政主導で決められることへの違和感や安全への懸念を膨らませ、「どうする⁉どうなる⁉大阪の2025年遠足~大阪・関西万博~(どど万)」を立ち上げます。
〇声明、陳情、請願などの政治活動
「招待事業は強制ではないことの確認を」「学びや安心安全が保障される招待事業を」という柱を立て、タブー視されている政治的な話題を正面から取り上げ、戦略を立て、行動を起こします。
〇メディア対応や議員訪問、様々な初めての体験
メディア露出の不安、政治家を訪問する緊張感など未知への不安を抱えつつも、対話によって立場の異なる者同士が同じ景色を共有できた、という手ごたえを得ます。
その結果、大阪府議会において全会一致で「どど万」の請願が採択される(教育関係の請願としては令和初!)という快挙を果たしました。
困難を乗り越えた若者の成功譚を聞く場ではありません。忙しくても経験がなくてもリスキーでも、仲間と「市民する」ための組織づくりについて、様々な環境を言い訳にせずに「市民する」教員の在り方について、一緒に考えませんか?