日: 2025年7月18日

一般分科会8 [ 授業 〕 「隣人」である東アジアとの関係を問い直す授業

今年の初めに『東京サラダボウル』(NHK)というドラマが話題を呼びました。「ひとびとが無意識のうちに排外思想を抱いてしまうのは……私たちが生きている社会制度のなかに偏見が刷り込まれている」からだと本作の在日外国人社会考証の担当者は言います。だとすればそれを見抜く目を養うのは学校の役割でしょう。
 また、小池百合子東京都知事は、関東大震災の朝鮮人犠牲者追悼式典に追悼文を2017年以降送っていませんが、その理由を聞かれ、事実とデマを並べて「いろいろな史実がある」として誠実には答えていません。ところが、歴史の事実を否定する小池氏の態度は、選挙戦にはほとんど影響を与えていないかのように、昨年の都知事選では、300万票弱(42.8%)を獲得して3選を果たしました。
 いまネット上で繰り広げられている論争(論争と言えるほどの内容の深まりはないですが)は、少なくない人々に影響を与えています。私が一番苦々しく思うのは、「事実とデマ」がない交ぜになった「論争」を見て、少なくない人々が片方の主張を鵜呑みにし、また多くの人々が「どっちもどっち論」に陥り、問題の本質を見失ってはいないかということです。高校生も例外ではないでしょう。
国会パブリックビューイングで有名な上西充子さんは「双方の主張を見て、その間を取ろうと考える人は少なくないが、間を取るだけでは、マイノリティー側が不利になります。そうではなく、互いの主張の根拠はどこにあるのか、よりまっとうなのはどちらなのか、一歩踏み込んで判断してほしい」と言います。
 さて、本分科会では、「『在日韓国・朝鮮人をはじめとする在日外国人へのヘイト』、『SNSなどによる個人や集団への攻撃』が横行する現在、『隣人』である東アジアの人々や在日外国人に対する『思い込み』・『好ましくない関係』を問い直す授業はどのようにつくれるのか」という問題意識の下に、いくつかの科目で試みた実践を池上聡一さんが報告されます。また、池上さんは、今まで高生研は「様々な個人が対等平等に意見を出し合い相互に承認・成長」していくような実践を目指してきたが、国境・国籍なども越えて「対等平等に相互承認、相互成長する関係」をつくりだすためには、教科学習を通しての知的な学び、事実にもとづく意見交換や「問題」について考える機会が不可欠だと痛感しておられます。
 この報告を聞き、このことに関して、目の前の生徒たちはどのような状況なのか、「『思い込み』・『好ましくない関係』を問い直す授業」は如何にすれば可能なのか、参加者の経験や実践も出し合い、考えあいたいと思います。
報告は、社会科の授業実践ですが、社会科の教師とは別の視点での感想・意見は貴重だと考えているので、他教科の方々の参加を大いに歓迎します。